セックスと運転2011-11-23

テレビ屋さんの作る安い泣かせと繰り返しと冗長な演出の映画が好きでないので、昨今の日本映画の隆盛が本当に喜ぶべきことなのかはかなり懐疑的です。観てもないのにディスれます。おかげでシネコンへ行っても選択肢が少ないったら。『ワイルドスピード MEGA MAX』の観客になぜか年配の人が多かったのも、ひとつには選択肢の少なさ故じゃないんですかね。予告編どころかポスターだけで馬鹿げたブロックバスタームービーだということはわかっているのに、意外なほど年配のお客さんが多かったです。それとも単に若者は映画を観ないのか…。

『ワイルドスピード』の1の頃には、ドミニク一家の暮らしに妙なリアルさがありました。家でのパーティのだらだらした感じとか、バーベキューの後にブルース・リー映画を観たがる男どもとか。ドミニクには確かにはっとさせられる佇まいがありましたが、あくまでヤンキーが強盗に手を染めちゃったみたいなもので、とても今作で言う「犯罪者のプロ中のプロ」には見えなかったものです。当時は、その部分こそアメリカのヒスパニックおよび各国の都市部と郊外に暮らすヤンキーめいた層に大受けしたんだろう、と推測していました。退屈で行き場のない日常とそれを打ち破るものとしてのカーレースの対比ですね。

…が、どうやら違ったようです。前々作や前作からの流れとしては、今回も『ワイルドスピード』的には手堅い仕事です。バカバカしいことこの上なく、水着みたいな格好でクルマに群がるお姉ちゃん達もきちんと登場し、主要な登場人物にはドライビングテクニックときれいな女の子が漏れなくついてきます。カーアクションの見せ場も前回同様たっぷりご用意。合間に仲間うちでのレースが入るのも同じです。
これが世界的にヒットするとすれば、理由は簡単に想像がつきます。クルマと女の子は、ちょっと経済的な豊かさが手に入る社会なら、すぐに男の子のドリームになるでしょう。イギリスの往年のF1レーサーであるスターリング・モスが言った通りです。「男が絶対に負けたくないものが二つある。ひとつはセックスで、もうひとつは車の運転だ」
不良漫画である『クローズ』がヘミングウェイ的というか『大脱走』的な「男の世界」を描くのに対し、こと話がバイク絡みの暴走族漫画になると必ずヒロインが登場するのもむべなるかな。

…あまりにストレートなんで、場合によっちゃBrian/Domか?と思っていたのも帳消しです。女の子たちと楽しくやってください。ブライアンの女ミアを演じるジョーダナ・ブリュースターは笑顔に愛嬌がありますが、その分美人に見えなくなるので、そこを魅力的と思うかどうかで評価が決まりそうです。ドミニクと絡む新しい女の子はよくいる白人の中年女性になりそうな顔立ちで、この先がちょっとばかり心配に。ジゼルについてはいきなり前歴モサドとか言い出して、演じるガル・ギャドットがイスラエル出身だというのを知っていると、さらにビビります。ジゼルがいちばんエッジが効いていて可愛かったです。

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