祭囃子の音が遠い2009-07-28

七月大歌舞伎の夜の部は「夏祭浪花鑑」と「天守物語」。「天守物語」は完璧な非日常。白鷺城の天守閣にはこの世ならぬ世界が…というだけでもアレだが、住んでいるのが坂東玉三郎なんだもんなあ。いや色っぽかった。初めて女形をすごいと思いました。玉三郎の相手役である姫川図書之助を海老蔵が演じていたが、玉三郎の迫力に較べるといかにも「金も力もなかりけり」な青二才ふうで、そこがまた乙なところなんだろう。誘ってくれたみなせさんが「泉鏡花の時代には、ああいう色男が生きていくのは今より大変だったでしょうし」というようなことを仰ってて、言われてみれば確かに…である。

「夏祭浪花鑑」は市川海老蔵が演じる団七の殺陣が季節もの。舞台の上に川と井戸がある。はずみで舅を殺してしまった団七は、ようよう近づいてくる祭囃子に我に返って井戸の水を頭から被り、刀を鞘にしまおうとするが手が震えて思うようにしまえない。刀の柄に鈴みたいのが仕込んであって、手が震えるたびタンバリンみたいな音が響くようになっている。衣装もすごかった。団七は舅の義平次ともみ合ううちに着流しが脱げて髷もほどけてしまうのだが、全身刺青で、下帯が真紅。うわぁ。だんじりに紛れて祭囃子を口ずさみながら去るという幕切れもいい。あの一連のシーンは、見終わってすぐより、時間が経ってからだんだん鮮明になっていくような気がする。