深夜のチンドン散歩 ― 2009-06-13
今夜は家主が体調を崩しているので、出かけられずに家にいる。こんな夜に家にいると何とも足がかゆくなる。無性にほっつき歩きたい。『ブラック・マシン・ミュージック』の野田努が深夜に散歩するのが好きだと書いていて、心底うらやましい。家主が寝付いたら出かけたいが、家主と来たら気配に聡くてすぐに目を覚ましちゃうんだよな。
『うる星やつら』の映画版2作目『ビューティフルドリーマー』は押井守の初期の傑作として名高いそうだ。その後の押井監督作品はねちねちしていてあまり好きではないし、この映画にしても私にとってのよいアニメの条件「一瞬たりとも絵が止まらないこと」には合致しないが、例外的に好きな作品だ。特にいいのが主人公たちの通う高校の「学園祭前日」を描いた最初の30分で、夜のイメージがすごくうまい。夜食を買い出しに出る道路沿いの景色や、暗い廊下と給湯室の明かり、誰も乗っていないバスの最後部席から眺める雨の町並み、雨の夜のタクシーの妙な不安感、プラットホームの蛍光灯が歩くような早さで端から消えていく。イメージさえ優れていれば、映像に多少の制限があってもいいのだな、と思う。
いちばん好きなシーンは、信号待ちで停まる車の前に不意に現れるチンドン屋。浮かれて物寂しいチンドン屋の音楽が静まりかえった深夜の表通りに鳴り響き、あっけに取られる諸星と面堂の前を通り過ぎる。あれこそ最高の深夜の散歩者だ。