シェイクダウン2009-01-05

運転手たちは、いい夜(グッド・ナイト)というのが儲かった夜ではないことを理解し始める。儲かった夜はグレイト・ナイトだ。グッド・ナイトというのは、どうにかその夜を生き延びて、明日のシェイプアップ・タイムで今夜の話ができることなのだ。

マーク・ジェイコブスンの『アメリカン・ギャングスター』から、ニューヨークのタクシー運転手について書かれた「夜間勤務のいかした運転手たち」の一節。シェイプアップ・タイムというのは勤務交代時間のことだそうだ。

タクシー運転手の物語は、災難を生き残った者たちの物語だ。それがシェイプアップ・タイムの主な会話のネタになる。八番街百三十五丁目で、スペアタイヤがないのにパンクした話はなかなかいい物語だ。公園内の横断道路を時速五十マイルでブレーキを踏まずに突っ切った話もいい。赤信号で停まったらティーンエイジャーがフロントガラスに飛びついてきた話も悪くない。生きてそのことが語れるかぎり、すべてはいい話になる。

今日はまずまずの一日だった。というか、拍子抜けするくらい何事も起こらなかった。休暇中の人も多いし、今日はみんな慣らし運転みたいなものなんだろう。そのうち「グッド・ナイトというのは大きなトラブルが起こらない夜」になるのかもしれないが。