不謹慎な観光客2007-12-16

ちょっと時間ができたので『アイ・アム・レジェンド』を見てくる。
前半はいいが、後半はいまいちだ。『アイ・アム・レジェンド』は、リチャード・マシスンの原作の三度目の映画化だ。最初は1964年、白黒のちょっとB級ぽい傑作ホラーSFで、これは原作に忠実だ。次が1971年の『地球最後の男オメガマン』、主演はチャールトン・ヘストン。終わり方が原作と大きく異なるそうだ。私は見ていない。三度目が今回の『アイ・アム・レジェンド』で、あわせて原作も新訳が出たそうだから、近々見てみるつもりでいる。
で、これは、チャールトン・ヘストンがやったやつと同じで、原作を変えてあるのだな…そうか、そりゃ残念だ…。本当に残念だよ、ウィル・スミス。

この映画の「前半がいい」というのは、不謹慎な観光客の気分に近い気がする。

主人公ロバート・ネヴィルは、街全体が廃墟と化したニューヨークに愛犬のサムと住んでいる。セントラル・パークにトウモロコシの畑を作り、ブロードウェイで鹿を狩る。この光景に何となく『ファイト・クラブ』 を思い出した。原作ではなくて映画の方。映画公開時には、反体制ポルノとまで言われたという『ファイト・クラブ』で、ブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンが、浅い眠りにうとうとする主人公に向かって語る。
俺には見える。お前は大峡谷と化したロックフェラーセンターの廃墟でヘラジカを追う。一生ながもちする革ジャンを着て、シアーズタワーに絡みついた葛のつたを登る。見下ろすと小さな人間たちがトウモロコシを育て、見捨てられたハイウェイには皮を剥いだ鹿肉が並べられているだろう。
まさしくこの映画の冒頭じゃないか。つけ加えておくと、タイラー・ダーデンのたくらむプロジェクト・メイヘンはラスト、金融街のビルを何棟も崩壊させる。

もうひとつ思い出したのが、今年のはじめにDIESELが展開していた "Global Warming is Ready!"の広告だ。WIREDの記事は こちら。ここではマンハッタン島は海に沈み、摩天楼だけがかろうじて水面の上に顔を出している。
このシリーズでは世界のあちこちの都市が現在とは違った、カタストロフの後の様相を呈しており、WIREDではこの広告は EvilなのかFunなのか、と言って紹介している。が、どれも挑発的でかっこいいのも事実だ。
『アイ・アム・レジェンド』のニューヨークがオッケーなら、この広告は?

『TOKYO NOBODY』がちょっといいなと思ってしまうのとどこかで繋がってはいないだろうか。あるいは軍艦島へのクルーズ船に乗りたいと思うこととは?