PANDORA2008-03-19

小さい頃、初めて聞いた「パンドラの箱」の話をまるで理解できなかった。
火を盗んだプロメテウスへの復讐のために、神々はパンドラという名の女を作る。箱を持ってやってきたパンドラをプロメテウスは拒んだが、弟のエピメテウスが彼女に惚れて結婚してしまう。さて、ある日パンドラは好奇心に負けて箱を開ける。すると中に入っていた様々な災厄----疫病、飢饉、犯罪などなどが一気に飛び出した。パンドラは慌てて箱を閉めたが、すでにひとつを除いて外に出てしまった後だった。最後に残っていたのは、希望だ。

後年、ある程度の知識がついてからギリシア神話を見てみると、この話にもいろいろ異説があることがわかる。ポイントになるのは二つ。

  • 最後のひとつは何だったのか?
  • 最後のひとつは外に出たのか、出なかったのか?

最後のひとつである「何か」が「外に出た/出なかった」ことで、人間は今も生きている、と話は終わる。それをよいこととするか悪いこととするかは使い方次第だ。
プロメテウスが火を盗んでからパンドラの箱が開けられるまでの間、人々の間には疫病も飢饉も犯罪もなかった。そこでパンドラが蓋を開けたのでそれらのものが広まった。とすると、パンドラの箱から外に出たものがこの世に存在することになる。
私が最初に聞いたバージョンでは「希望が残った」のだった。しかも「だから人間は希望を持って生きていけるんです」と結論づけられていた。もし、最後に「希望が残った」とするならば、希望は箱の外に出ていないのだから、人間に希望は残されていないはずだ。それ以外のさまざまな災いが世に満ちたことと矛盾する。最後のひとつが「希望」だった場合、それは「蓋が閉まる直前に飛び出した」ものでなければならないとおかしい。『エリア88』でサキが語るのは「最後に希望が飛び出した」バージョンだ。希望を捨てきれないからこそこんな負け戦をやっているんだ、と苦い真情を吐露する場面だった。
その後で「予兆が残った」というバージョンを聞き、こちらの方が話のつながりが自然に思える。次々と押し寄せる不幸な出来事の数々をあらかじめ知ることができたなら、絶望のあまり人間は死に絶えてしまうだろう。予兆が箱の中に残されて希望が人間の手に残される。数々の災厄に混じってひとつだけ「希望」が入っているとすると、その希望はエリア88的な悲哀を帯びてくるが、予兆が残った結果としての希望ならばもっとニュートラルだ。
プロメテウスが「希望」の入った小箱を残しておいた、というバージョンもあるが、これだと何となくできすぎているというか、希望が問答無用の「いいこと」として設定されているようで、神話的な迫力に欠ける。

ところで、プロメテウスで検索かけようとすると予想検索キーワードとして「プロメテウス火山」と表示される。何だって!そんな火山あったか!と思って検索してみたら、東京ディズニーリゾートの火山にその名前がつけられているそうだ。脱力。