バイバイ、ロイ2008-02-12

ロイ・シャイダーが亡くなったそうで。
出演作ベスト3と言われたら、『オール・ザット・ジャズ』『ジョーズ』『フレンチ・コネクション』。70年代の映画しか出てこないなあ、というかその後は主役を張ることが少なかったのだが。『ジョーズ』の泳げない警察署長や『フレンチ・コネクション』のクラウディもよかったのだが、訃報を聞いて真っ先に思い出したのはやはり『オール・ザット・ジャズ』だ。
ロイ・シャイダーが『オール・ザット・ジャズ』で演じたのは、監督であるボブ・フォッシーの分身であるジョー・ギデオン、ショウビジネスに頭の先までどっぷり浸かって酒と煙草とセックスに耽溺し、家族も恋人も顧みない男だった。朝は目薬とヴィヴァルディで無理やり起き出し取り憑かれたように働いて、暇さえあれば女の子をベッドに連れ込んでいる。死の床でギデオンが最後に夢見るのは、自分の最後のステージだ。バイバイライフ、バイバイハピネス、ハローロンリネス、思うにおれは死ぬみたいだ。死ねる気分だ。
もう三十年以上前の映画だ。
ここで描かれているショウビジネスは、真の美(って何かはさておき)になかなか近づけない軽薄で猥雑でゴージャスなもので、ジョー・ギデオンはどこまでが現実でどこからが虚構なのかすでに区別はつかない。「彼には死だけが本当だ」と明るく笑ってベン・ヴェリーンが言う。

コーラスが終わり客席はスタンディングオベーション、バンドが華々しいフィナーレを奏でる中、ギデオンは客席の恋人や家族、知り合いに挨拶をして回り、ステージに戻って最後のコーラスを歌う。バイバイ、マイライフ、グッバイ。不謹慎な話で申しわけないがロイ・シャイダーは一瞬でも、あれを思い出したりしたろうか。

見ている私にも現実と虚構の区別なんかついていない。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://cineres.asablo.jp/blog/2008/02/12/2622520/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。