人に非ず2008-08-25

『インクレディブル・ハルク』にはこの夏いちばん期待していたのだが----『ダークナイト』より『ハンコック』より『アイアンマン』より期待していたのだが、正直、可もなく不可もなしという感じであった。今年は予想を外したかな。

エドワード・ノートンはやせ気味の中肉中背、しかもちょっとなで肩なのだが、対するリヴ・タイラーがえらくしっかりした体つきであることにびっくりした。もうちょっとジェニファー・コネリーとかに近い感じかと思っていたんだが、キルスティン・ダンストとかサンドラ・ブロックみたいな、「かわいいアメリカン・ガール」だったんだなあ。
さらに言えば演技も大味というか、わりと下手というか…

冒頭のブラジルシークェンスは面白かったが、考えてみればブラジルは、エドワード・ノートンのアクションがもっとも多いシークェンスなのだった。つまり、ハルクに変貌するまでが長い。三度ある大がかりなアクションのうち、二度目のヴァージニア州の大学のシーンではハルクになってからのアクションがメインとなり、最後のN.Y.では完全にハルク対敵のモンスターである。
つまり私がいちばん面白いと感じたのは、ハルクになる前のエドワード・ノートンであって、ハルク自体ではなかったことになる。

ハルクがなんとなく気にかかったのは、どう見てもゲームのCGみたいな質感と表情の雰囲気だ。よくできているのだろうし、生き物っぽく見せようとしてはいるが、顔つきがCGアニメかお人形さんだ。また妙にグラデーションのついた塗りが、ますます血とか体液とか臭いとかない感じ。
アクションの規模で言うならば、ちょうどトランスフォーマーの大きさに近いのだが、トラックだの乗用車だのが変形した「ロボット」のトランスフォーマーの方が、より人間的で表情豊かなハルクよりも浮かずに見えるのが、皮肉と言えば皮肉だ。けれどよくわかる気もする。

まったく人間とは異なる形状のものを人間ぽく見せるのは、人間によく似ているが人間ではないものを人間らしく見せるより、はるかに簡単だ。