noumenon2007-11-02

一社受かって一社落ちたよ。
ちなみに落ちた理由は「当社で働きたいというパッションが感じられないから」だそうだ。そういえば、私はこと仕事中は第一印象「落ち着いている」と言われることが多くて、「活動的で積極的」な印象は与えないのだった。なのに面接に際してはことさら簡潔に(=そっけなく)、落ち着いて(=冷淡に)喋ろうとしていたよ。実際は落ち着いてもいないし、簡潔に喋るタイプでもない。

帰宅したら、家主がロールキャベツを煮てくれていた。あーおいしい。しかし漢字ナンクロを解きながら「あんた『ぶつじたい』って知ってる?」というのには参った。知ってるよ。昔そういう勉強をしてたことがあるんだよ。「『ものじたい』って読むんだよ」と言って、一分でカントを要約することに。信じないでねだいぶ嘘だからねと言ってはおいたが、「物自体」という単語をあまりに久しぶりに聞いたので、一気に記憶が甦ってきた。今日も某社の面接で(ここは行ってみたら全然違ったし、相手もきっとそう思っているだろう)、「哲学科で何をやっていたか」説明させられたばっかりだったんだけど、いい加減その質問にも慣れてはいるのでルーティンの回答しかしていなかったのだ。

それにしてもロールキャベツはおいしかった。肌寒い雨が降っているし、カレー味のスープが五臓六腑に染み渡るというものだ。
あらゆることの秘訣は、けっして生活をごまかさないことだという、このきびしい、新しい知識にみたされて、ぼくはさっそく生活をごまかそうとしはじめた。 とノーマン・メイラーは『ぼく自身のための広告』で書いている。代表作のひとつ『鹿の園』が出版されたとき、勇気を出してヘミングウェイに送ってみたけれど宛先不明で転送されてきた、というくだくだしい話の中だ。ちょっと前にはこんなことも書いている。むしろわれわれは、人間になると、その罰として自分のタレントを鈍らせてしまうが、それでも人間になるほうがいっそう重要である
生活をごまかさないというのには深く感じ入ったが、ヘミングウェイが返事をくれなかったのも仕方ないような気もする。ノーマン・メイラーがヘミングウェイに送ったという手紙を読むと、「----だが、もしあなたが返事をされないなら、それとも、アマチュア作家や追従家、おべっかつかい等々に、こたえたような、うそっぱちの返事をされるなら、あなたなど糞でもくらえで、ぼくはあなたに手紙を書こうなどとは、二どとけっしていないだろう。」とか、「あなたはぼくよりも、見栄坊らしくさえおもえるので」とか書いてあるのだ。『鹿の園』は1955年でノーマン・メイラーは三十代前半、意気軒昂な若手作家だったんだろうが、もうちょっと書きようがなかったんだろうか。

これもある意味、自己PRを書いた職務経歴書を送る休職者だと思えば、その意気軒昂っぷりを少し分けてもらいたいものだけどね。